グラフェンプラットフォームが黒鉛結晶構造とグラフェン剥離との関係を定義

グラフェンプラットフォーム株式会社(本社:東京)は、世界で初めて、黒鉛の結晶構造の変化がグラフェンの剥離生成に大きく影響することを発見し、この結晶構造を持つ黒鉛材料「グラフェン前駆体」の製品特許を取得した。

■剥離法のメリットは圧倒的な「生産性の高さ」

グラフェンは、原子1個分の厚さしかない極薄のナノ炭素材料。炭素原子がハチの巣状に結合して二次元平面を形成するという特異な結晶構造を持つことから、グラフェンの電子移動度は極めて高く、光学特性、熱特性、力学特性などでも優れた物性を示す。このため次世代材料として活発な研究開発が進められている。

グラフェンの合成法はいくつかあるが、その中で、鉛筆の材料でもある黒鉛(グラファイト)からグラフェンを得る方法がある。黒鉛は二次元のグラフェンが多層に貼り合わさった三次元構造の物質であるので、これを剥離することでグラフェンを得ることができる。

黒鉛からのグラフェン剥離のメリットは、生産コストを大きく下げられる点にある。剥離法以外の主要なグラフェン生成法であるCVD(化学的気相成長法)と比べると、その生産効率の高さは歴然としている。

CVDは、真空容器の中に銅などの基板を置き、そこにグラフェンの材料である炭素を含んだガスを流す方法である。基板上に大面積・高品質のグラフェンを成膜することができるが、真空環境を使用することなどからコストは高く、1m2のグラフェンを作製するには、品質にもよるが数十~数百ドルかかる。

一方、剥離法では、同じ数十~数百ドルのコストで重さ1kg程度のグラフェンを得ることができる。グラフェンは極薄・超軽量であり、その単位重量あたりの表面積は2500m2/g程度という巨大な値となるから、重さ1kgといえば、基板上に成膜した面積250万m2のCVDグラフェンに相当する。つまり重量を基準に比較すれば、CVDと剥離法のコストには約250万倍もの開きがあることになる。CVDグラフェンが要求される高付加価値な用途を除けば、今後、産業用に大量生産されることになるグラフェンの製造方法としては、黒鉛からの剥離が主流になることは確実といえる。

■「グラフェン前駆体」とは

今回グラフェンプラットフォームが発見し、特許取得した技術によって、黒鉛からのグラフェン剥離はさらに高効率化することが可能となる。ある特定の結晶構造を持った黒鉛「グラフェン前駆体」※1を原料に用いて、通常の剥離プロセス(超音波、超臨界、高圧噴射、衝突、磨砕、酸化・還元、マイクロ波(イオン液体中)、混練など)を行うと、一般的な黒鉛から直接剥離するのに比べ、生産効率が劇的に向上する。グラフェン前駆体は一般的な黒鉛と比べて結晶性が低く、剥離しやすいため、従来の剥離法で必要だった濃縮工程を経なくても、高濃度のグラフェンを大量生成できるからである。

※1 グラフェン各社の商品名では、NGP、Nano Graphene Powder、GNP、Graphene Nano Platelet、FLG、Few Layered Graphene、pGraphene などと呼ばれている。

この技術により、グラフェンの大量生産(年産100トン~1万トン超規模)が可能となり、比較的安価なナノ素材(1kg当り20~100ドル)が必要とされる二次電池、キャパシタ、樹脂・ゴムコンポジット、建材用複合物質などの分野にも十分対応できることになる。

黒鉛の結晶構造は、試料にX線を照射したときのX線の散乱・干渉によって生じる回折現象を調べる手法(X線回折)で知ることができる。グラフェン前駆体は、X線回折で測定した黒鉛結晶中の六方晶 (HexagonalまたはAB Stackingと言う。) および菱面体晶 (RhombohedralまたはABC Stackingと言う。) の積分強度を比べ、菱面体晶の比率が31%以上の黒鉛材料と定義している。

・定義:Rate(3R) が31%以上

・計算方法:Rate(3R) = P3 / (P3+P4) × 100

P3:菱面体晶(101)の積分強度値(2θ=43 deg台)

P4:六方晶(101)の積分強度値(2θ=44 deg台)

・測定方法:X線回折(XRD、(X-Ray Diffraction)ピークリストから各積分強度を読み取る。(詳細については、文末の<参考情報>を参照)

この結晶構造を31%以上持つグラフェン前駆体は、同社の特許製品であると同時に、この黒鉛材料を使用して製造された下記の製品群も併せて特許として取得した。

蓄電製品:

リチウムイオン電池などの二次電池、キャパシタ、コンデンサー

導電性製品:

導電性インク・ペースト、透明導電膜、電池電極部材など

熱伝導製品:

ヒートシンク・スプレッダー、放熱材、シートヒーターなど

強化複合物質:

強化・高機能プラスチック、高機能ゴム、高機能セラミックス素材、強化コンクリートなどの建築資材など

潤滑物質:エンジンオイル、軸受けグリースなど

これらの特許(全5件)は、日本ではすべて成立済みで、アジア、欧米の各国でも順次審査成立中である。また、これらを基に、グラフェンプラットフォームは、パートナー企業と共にグラフェンの大規模なサプライチェーンの構築を行っている。

<参考情報>

■グラフェン前駆体の判別方法

菱面体晶の含有率Rate(3R) が31%以上である黒鉛を「グラフェン前駆体」と定義し、以下の方法で判別・測定する。

1.XRDで測定し、ピークリスト(※)を出力する。

※ピークリスト:各ピーク高さ、FWHM(半値幅)、積分強度等が記載されている表

2.上記ピークリストから、下記、2種類の積分強度の値をとる。

P3:菱面体晶(101) の積分強度の値(2θ=43 deg台) (上記表では “68082″ の値)

P4:六方晶(101) の積分強度の値(2θ=44 deg台) (上記表では “89244″ の値)

3.下記の式に2.の値を代入し、菱面体晶の含有率Rate(3R)を計算する。

Rate(3R) = P3/(P3+P4)×100 ・・・式

菱面体晶の含有率Rate(3R)が、31%以上の時、飛躍的に黒鉛がグラフェンに剥離し易くなる。

■必須測定条件

光学系属性:集中法

X線波長:CuKα / 1.54862Å

■工業試験場

X線回折(XRD)の試験をおこなう関東圏の工業試験場を参考のために例示する。(料金は1試料1測定の場合)

埼玉県産業技術総合センター

技術支援室化学技術 担当者:佐野 048-265-1311 9,600円(税込)

神奈川県産業技術センター

電子技術部化学技術部 046-236-1500 21,020円(税込)

東京都立産業技術センター

総合支援窓口 03-5530-2140 19,440円(税込)

群馬県立産業技術センター

総合支援窓口 027-290-3030 12,300円(税込)

栃木県産業技術センター

材料技術部 028-670-3397 4,740円(税込)

■下記ページに自動計算式あり

グラフェンパウダー/グラフェン判別方法/

問い合わせ先 取締役 神谷 渚

kamiya@grapheneplatform.com TEL: 03-3791-3711

原稿元:Graphene Wiki & News